若い人から見たCB1100インプレッション

 現在僕が乗っているCB1100のインプレッションをお届けします.

CB1100とは

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 CB1100と言えば,Hondaが世のベテランライダーに向けて放った,トラディショナルな雰囲気をまとったバイクです.Honda公式でも「ターゲットは昔のスタイルのバイクを欲しがるベテランライダー」と言っています.

 実は僕はベテランライダーではないです.まだ20代前半だったりします.そこで今回は,そんな若い人向けのインプレッションを書いていこうと思います.

走行性能は?

 まあまず気になるのはこれでしょう.CB1100は88ps.世の大型フラグシップがオーバー180psに到達しているこの時代からすると,決して高性能とはいません.むしろ性能が低いと言うことになります.ホイールも18インチ.ブレーキディスクローターも小さめです.超オーソドックスな車体構成で,走りを意識した構成ではありません.

エンジン

 エンジンはどこからでも均一に伸びる味付けです.SSのように,高回転でビックパワーを炸裂させる!!というのは全く,これっぽっちもありません.高回転まで回転を上げてもただ回ってるだけです.じゃあ低回転は?というと,これもバンディット1250のように低回転でビックトルク!!というのも全くありません.何事もなく,ただそれなりのパワーが出てくるだけです.

 パワー感はCB750をもう少し強化した,というような印象です.

 ミッションも5速で,ガンガンギアを切り替えるといったものではありません.エンジンブレーキもごく普通,というかスポーツタイプに乗り慣れている人は多分違和感を覚えるほど,走りを意識していないエンジンブレーキです.

車体

 癖が全くない車体です.SSやストファイでは,しっかりと,曲がる意思をバイクに伝えなければバンクしません.しかしながら,CB1100は驚くほど簡単にバンクします.タイヤが18なのが効いているのでしょう.

 じゃあコーナリングは速いのか?といわれるとそうではありません.簡単にバンクしますが,18インチタイヤのせいでコーナリングは膨らみます.また,ステップ位置が下の方にあるので,それなりのバンク角でのコーナリング中にシフトをあげようとすると,簡単に地面につま先がつき,足が弾かれます.

 しかしながら,それなりの安定性はあります.コーナリング中に特に怖い思いをすることはありません(というかそこまで無茶できない)し,直線安定性も予想以上に高いです.というか,大型のリッターネイキッドでそこまで峠道を頑張って走る,というのはあまりないかなと(ストファイは例外).そう考えると,軽快に走れるCB1100のほうが,乗っていて楽しいのかもしれません.

 ブレーキははっきりと弱いと感じました.もう少し強めて欲しかった.間違いなく走りを突き詰めるブレーキではないです.

ユーティリティ

 シート下はサービス工具のエリアを除くと何も入りません!!諦めましょう.CB400SFがシート下収納たくさんだったのでこれには驚いた.軽快さを出すために,部品を中央に集結させているのでしょうね.

 フックを引っ掛けるところはあるので,荷物を載せるのは比較的容易です.最近のバイクは後ろの席を細くするので積載が気になるところなのですが,CB1100については問題はありません.

町中を走ってみて

 普通に走れます.リッタークラスのくせに,ギアもどんどん上げて行けます.ちょっとコンビニ行ってくる,という用途でも臆することなく乗ることが可能で,散歩もこなすことができるという印象です.
 しかし夏場はさすがリッターの空冷.暑いです.渋滞にはまるともう最悪で,したから熱気が止めどなく上昇してきます.汗だくになるのは覚悟せねばなりません.しかしハイパワーな大型のように,熱いということはありません.暑いのです.

峠道を走ってみて

 意外とスイスイ走れます.しかし下り道はやはり大型.中型の感覚で行くと突っ込み過ぎます.ブレーキも強くないので,すぐにやる気が無くなります.
 特にエンジンがやる気にさせません.どこまでもぼへ~っと均一に伸びるエンジン特性.高回転スポーツの「キタキター!!」という感覚は皆無です.

じゃあダメなバイクなのでは

 個性的な構成が多い大型バイクの中で,CB1100は異端児です.恐ろしく普通,普通という表現がすっぽりと当てはまるバイクです.よく言えばユーザフレンドリー,悪く言えば没個性.そういったバイクです.
 しかしこのCB1100,乗っていると不思議な感覚になります.バイクを意識しない,主導権はライダー,気負わない感覚.考えてみれば,リッタークラスでバイクを意識しないというのは異常です.そんなバイクはこれまで存在していなかったはずです.リッタークラスとはアクセルを開けるのにも慎重になり(急に開けると後輪が滑って転倒するリスクもあります),取り回しにも,駐車にも気を使うはずなんです.しかしこのCB1100は,そういった煩わしさをライダーに全く与えない.ライダーはただ「バイクに乗れる!!」という喜びを味わうだけなのです.

 性能についても散々書きましたが,正直,これほどライダーにフィットしたパワー感はないでしょう.パワーは可もなく不可もなく.決して遅いわけでもなく,決して速すぎるわけでもない.ゆっくりと走ることもできますし,高速に乗ればアクセル全開で3秒立たないうちに法定速度です.自由自在という表現が当てはまるでしょう.

 見た目についても良い線を行っていると思います.オジサンライダーにはどこか懐かしく,僕のような新米ライダーにはなにか新しい,そんなデザインになっていて,所有感を満たしてくれます.メータも綺麗な仕上がりで,特に夜間の視認性と美しさは素晴らしく,乗っていて楽しくなります.

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くっきりと文字が浮かび上がるアナログメータ.中央部分にはデジタルのオドメータやガソリン計などがあります.時計は常に表示される仕様です

 ベテランのライダーを満足させるための車体なので,チープに感じる部分はありません.特にタンクの塗装は素晴らしい.単純に綺麗というのもあるのですが,日の当たり方によって色の具合が変わるんです.日本に合った,日本らしい演出だと思います.これには驚いた.

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タンクに写り込んだ景色が影のような演出を出し,ただの単色ではない,味わい深い色が出ます.


 エンジンの見た目も素晴らしい.フルカウルやストファイが主流になってきた今,このエンジンは希少です.エンジンの綺麗さを主張するバイクというものは,今後なくなっていくでしょうから.

最後に

 「シンプルなバイクでよい」というオジサンライダーは意外と多いのでしょう.このバイクはかなり売れているようです.シンプルなバイクといえばSuzukiのST250とか,Kawasakiのエストレアなどを思い浮かべます.しかし,長年バイクを乗ってきたベテランの方々には,250ccでは納得しないところはあるのでしょう.実際に250ccで長距離ツーリングは結構疲れますし,若い人間ならともかく,年を取ってくると辛いところがあるはずです.
 CB1100はそういった需要にフィットします.「余計なものを付けない」とは某リンゴ社に似ているところがありますが,洗練されたシンプルさとはどこか心地よくしてくれる要素を持っているのだと思います.余計なものは,バイクとの距離を遠くします.昔のバイクが持っていた良さを,現代の技術で再現した,といったところです.

若者に向けてはどうか

 もしもこのバイクの外観に惹かれたのであれば,買って良いと思われます.パワーもそこそこありますし,乗りやすく,「買って失敗した!!」と思うことはないと思います.

 しかしながら,峠道を走ることを念頭に置いている若者ライダーなら,ちょっと考えたほうが良いかもしれません.正直言って,峠道は前のGSR400のほうが面白かったです.このバイクは,峠道を駆け抜けたり,加速,ブレーキングを楽しむバイクでは全くありません.散歩を楽しむバイクです.ある程度落ち着いたベテランライダーのためのバイクなんですね.いわば,高級なファッションバイクです.バイクの楽しさは人それぞれですが,走りを楽しみたいなら,CB1100は選択肢に入れないほうが良いと思います.