久礼は高知の酒。友人からのおみやげとしてもらった酒である。久礼は前にも飲んだことがあって、その時に結構気に入ったので、友人が高知に行くと聞いてここぞとばかりに購入を依頼した。高知の酒といえば「南」が有名だが、南は関西でも買える。ただし久礼はなかなか見つからないもので、関西に住む僕個人としてはレアモノ扱いである。
さて、冷で飲んでまず感じるのは、非常に強い酸味。その強さは、味わいのほとんどがこの酸味であろうと感じるほど。この酒質は単品で飲むのには向かないが、焼き魚や刺し身と合わせると非常に良い味わいであると感じる。最近は甘めの酒が多く、酒単品としては成立するものの、刺し身と合わせるのが難しいような酒が増えている中で、この酒は昔ながらの酒飲みが好みそうな酒質である。海に面している高知という土地柄にもあっているのであろう。
さらには若干の発泡性を感じる。これは生酒のフレッシュ感をより強く演出するとともに、酸味の印象を更に強いものとしている。
裏面を見て最も目を引くのは、やはり原料米「吟の夢」であろう。酵母が何を使っているのかは分からないが、多くの蔵が酒米に山田錦、または五百万石、美山錦など、安定した酒米を採用する中で、地元の米を採用することで地産地消を実現している。独特の味わいは、この原料米から来ているに違いない。杜氏名まで書かれている。
試しに燗にしてみると、強烈な酸味は息を潜める。代わりに旨味が出てきて、さらにあっさりとした風味。酸味が苦手な人でも飲みやすい酒質に変化する。僕は燗酒のほうが旨いと感じたが、燗酒にすると合わせる料理も変化させたほうが良い。ただ焼いただけの魚や、刺し身では少し物足りない。バターで焼いたホタテなど、少し濃い味のあてが合うと感じる。